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研修会報告

設立五周年記念事業

特別講演 スローライフ-後半入生、最高の生き方-

タレント・株式会社自然樂校代表取締役社長
清 水 國 明
タレントの清水國明さんは、芸能界きってのアウトドア派、スローライフ実践者として知られています。2005年山梨県河口湖にアウトドアパーク「森と湖の楽園」を開園し、自然とともに生きる力を育む自然体験イベントなどを実施する新ビジネスに専念しています。 神奈川県不動産コンサルティング協議会設立5周年特別講演として、実践と経験に基づいたスローライフ、柔軟な発想で取り組む新ビジネスについてお話しいただきました。

清水國明 プロフィール
1950年福井県生まれ。テレビ、ラジオの司会やコメンテーター、新聞雑誌への執筆活動など、幅広く活躍中。自然体験イベントや講演活動も多い。1995年アウトドアライフネットワーク「自然暮らしの会」を主宰。2005年株式会社自然樂校を設立し、代表取締役に就任。同年7月、山梨県河口湖に「森と湖の楽園」を開設。

新しいビジネスモデルを目指して
特別講演 清水國明

 神奈川県不動産コンサルティング協議会の設立5周年、おめでとうございます。私のように、不動産の取引など分からない男をお招きくださって、ありがとうございます。
 私はここのところ、芸能活動より、山梨県河口湖の「森と湖の楽園」という自然体験施設を中心とした事業活動に専念しています。楽なものではなくて楽しいものを提供したいと株式会社「自然樂校」を設立し、近い将来、IPO(新規株式公開)を目指しています。河口湖を拠点にして活動するようになって3年が経ちますが、はじめはNPO(特定非営利法 人)で自然体験事業を行っていました。NPOでの活動は、参加する人たちを幸福にはするんですが、やっている本人はどんどん不幸になるんですね。国から助成金をいただいても、その2倍も3倍もお金がかかるので、その分は自己負担です。イベントをすればするほど自分のお金が出ていく…。そこで出資者を募って株式会社を設立し、IPOを目指すことにしました。
 山の中に自然体験施設をつくり、今まで無価値だった山中に付加価値を付けるというビジネスモデルを全国展開すれば、それまで利用価値がないとして見捨てられていた土地に新たな価値が生まれることになります。自然体験施設で、自然を知らない都会の子どもたちに、自然の中で過ごしてもらおうという事業で、社会貢献をしながらビジネスとして成功できたらいいなと思っています。

自分自身の期待に応える生き方
特別講演 清水國明

 河口湖に移り住む前から、家族でアウトドアライフを楽しんでいました。全国3万6,000キロを1年間かけて走ったり、ニュージーランド、カナダ、アラスカなどに行ったり…。それが、いよいよ都会の生活を捨て、河口湖で自然暮らしを始めようとしたら、家族に「いってらっしゃい~」と言われちゃったんですね。
 今まで、父親として家族の期待に応え、働いて税金を納めて社会人としての期待にも応えてきたんですが、もうひとつ、自分自身の期待には応えていない、という気持がどこかにありました。男として、まだ違う生き方があるんじゃないかと、ずっと思っていたんです。家族に見捨てられ、もっけの幸いと単身河口湖に移住したわけです。
 ところが、自分ひとりで趣味三昧、自然三昧の生活を始めたところ、1か月半しか続かなかったんです。
 例えば、思いのとおりの立派な釣竿ができても、それを見て一緒に喜んでくれる人がいないと、つまらないんです。自分のためだけに生きるという生き方は、長続きしない、ワクワクしないんです。人間というのは、やはり誰かを喜ばせて、その喜ぶ姿を見て自分が喜ぶ、という習性があるということを、身をもって知りました。
 つまりは、ひとつのケーキをふたりで食べれば、食べる量は半分になるけれど、相手がおいしいといえば、自分のおいしさも倍になる、というようなことでしょうか。

幸せをみんなと分かちあいたい
特別講演 清水國明

 「自然樂校」で自然の中で子どもたちの面倒を見はじめたら、これがとっても楽しいんです。  エデュケーション(教育)とエンターテインメント(娯楽)という言葉を合わせて、エデュテインメントという言葉があるそうですが、それを日本語で言えば、まさに「樂校」ということになるんでしょうか。
 夏休みになると、「自然樂校」にたくさんの子どもたちが来てくれます。子どもだけではなく、自然のなかで第2の人生を始めようという大人たちも集まって来ます。自然暮らしをしたいからといって、長年都会で生活していた人が、いきなり自然暮らし、田舎暮らしを始めてもうまくいかないんですね。シニアのみなさんには、自然の中での衣食住遊に関するスキルアップをするための場として、「自然樂校」を利用していただきたいと 思っています。

自然体験の重要性
特別講演 清水國明

 ところで、いま子どもたちの間で、いじめや自殺、引きこもりなど様々な問題が起きています。その原因をひとつだけ挙げるとするならば、人間の生活が自然から離れしてしまったことにあると考えています。
 「自然樂校」に来る子どもたちのなかに、耳が聞こえていない子どもがたくさんいるんです。セミや鳥の声が、音としては聞こえているんですが、心に響いてこない。雨に当たって鳥肌が立っているのに、寒いと感じない。つまり、感覚が開いていない、スイッチが入っていないんです。富士山を見ても何も感じない、感動しない子どもが多いですね。
 そういった子どもたちを森の中に連れて行って、汚れるからと言って嫌がる子どもたちを、なんとか地面に横にならせて、目を閉じて耳を澄ますように言うんです。そうしてしばらくすると、鳥の声、風の音などが聞こえてきます。一度スイッチが入ると、いろいろな森の中の音が聞こえてくるようになります。雑音の多い都会のなかで暮らしていると、おのずと耳をふさいで生活しているんじゃないでしょうか。
 山の斜面をみんなで駆け下りたり、火をおこして鉄なべ料理を作ったりしているうちに、子どもたちの顔が赤みを帯びてきて、生きものの匂いがしてくるんです。
 薪割りや、火をおこすのも子どもたちにやらせます。都会の子どもたちは、青い火しか見たことないんですよ。マッチなんて全然擦れませんね。ナタやナイフの使い方も教えます。
 自然体験のないまま大人の年齢になった「こどな」が、子どもを生み育て、スイッチの入っていない子どもを増殖させている。現代の社会のいろいろな問題の根源はここにあると私は思います。特に、ここ10年、20年はそうした傾向が顕著であるように思います。

子どもたちは大人に向かって前進する

 文部科学省も、子どもたちに生きる力を身に着けさせよう、と言っていますが、今の子どもたちには、全く生きる力が備わっていません。子どもたちの生きる力というのは、大人に向かって、「なにくそぉ」という思いで前進していく力だと私は思います。ところが、大人が楽しそうでないから、大人が溌剌と生きていないから、子どもたちは大人に向 かって前進していこうとしないんじゃないでしょうか。
 子どもたちの目標になる大人が少ないんです。大人はどんどん前に進んでいかなければいけないのに、立ち止まってる。高齢者のみなさんにも、どんどん前に進んでいただきたいと思います。やるべきことをやって、前進し、子どもから憧れられる生活を送ってほしい。思いっきり生きて、その頂点で死ぬ。私はそれを「直角死」と呼んでいますが、そうした生き方こそ素晴らしいと思います。私は、河口湖で一番大きな魚を釣った瞬間に死にたいと願っているんです。
 人生において、楽なほう、楽なほうを選んでいくと、結局、寝たきり状態になってしまうように思います。楽しいということと、楽をするということは、全く違います。
 富士登山にたとえると、8合目9合目あたりまで登って、ヘリコプターを呼んで頂上に連れて行ってくれ、というようなことを言う人が多いですね。楽をして頂上に登った人と、苦労して頂上に登った人では、当然のことながら感動の度合いが違います。
 チャレンジをして、それに成功していくつの感動体験を得られるかで、人生の意味が違ってくるように思います。チャレンジをせずに長生き競争に勝ってみたところで、人生に何の価値があるでしょうか。




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